「沢田綱吉」

「うわっ!って、雲雀さん」







リボーンから渡された書類に目を通している途中、

突如扉が開いたかと思うと、雲雀が立っていた。

驚いたが、すぐにどうしたかとたずねる。

雲雀が直接訪れるのは珍しいからだ。

頭に入りかけていた資料の内容がすっとんだ。








「どうかしたんですか?」

知らない?」

「え?」

「いないんだ」







、愛されてるよな。

なんてことを思いながら、が、心のどこかでツナは焦りだす。

彼女がどこに行ったかをツナは知っていた。

そして、自分が向かわせたんだということも・・・・








「知ってるよね?」

「え?」

「知ってるよね?」








雲雀は獲物を見つけたような目をしている。

殺気までちらつくほどの圧力が、

ツナを押しつぶそうとする。

思わず小さな悲鳴をあげた。








「ひぃっ!」

「どこに行ったの?」

「ぅ・・・・ヴぁ、ヴァリアー」

「今なんて言ったんだい?うまく聞き取れなかったよ」

はヴァリアーに行きました」









言っちゃったオレ!

自分で自分に突っ込み、

言わなければよかったと後に後悔する。

雲雀からの圧力はさらに大きくなる。

ツナは逃げ出したい衝動にかられる。








「どうしてあんな所に行かしたんだい?」








雲雀さん・・・・怖い。

切実にそう思った。








「ねぇ、聞いてる?」

「はぃ・・・・」








もうこれ以上、オレに聞かないで下さい。









のちに、

部屋に入ってきたリボーンに無事、救われた。



















御恩















それは今朝のこと。

用事があると言ってツナに呼び出しをうけたは、

黒いスーツに白いシャツを身にまとってやってきた。

ツナはに頼みたいことがあったのだが、

どうも言い出しにくかった。







「実は・・・・・・・その」

「何?逆に気になるって!」







ツナは何かを決心したかのように、を見た。

なんだろう?そうおもうはツナの言葉を待つ。








「実は、ヴァリアーに行ってほしいんだ」

「えー」








言うと思ったよ。

ツナは苦笑する。

だが、今回はそれだけではすまされない。








「実は、ザンザスからの直々の命令で、」

「・・・嫌な予感」

「向こうのシステムの更新及び、情報整理を頼まれてるんだ」

「ぇ・・・・どう考えても一日じゃ終わらないんですけど」








システムの更新、そして情報の整理となれば、

とうてい一日で終わる仕事ではない。

かつて、向こうの情報室やらなんやらみせてもらったときに、

唖然としたことがある。

システムが古い。

そして、コンピュータに入れられていない紙面上の情報が、

山のように積み重なっていたのを思い出す。

話によると、ヴァリアーの方には、

のような専門的な人物はいないらしい。









「それで、直々に命令がきたと・・・・」

「そういうことなんだ。頼む!」

「なんでツナはオッケーだしたの!?他にも人がいるじゃない!」

「ザンザスにさ、"貸し一つ"って言われたから・・・」

「・・・・・あぁ」








そういえばそうだった。

この前ヴァリアーに書類を持っていったときに、

そうツナに言うように伝言を頼まれたのだ。

それが、こういう形で返ってきたらしい。

なるほど、どうりでツナは断れない。








「ごめん!お願い!」

「・・・・・・・・しょうがないなぁ・・・」








しぶしぶ、オーケーを出した。

いや、出さざるを得なかった。









「終わり次第、帰ってきなよ」

「いわれなくとも」








少なくとも、

自分の身を案じてくれているらしいツナに、

強がりの笑顔を向けた。

















速やかに泊まるための荷物をまとめ、

車に乗って、出かける。

ちょっとした旅行気分にはなれたものの、

いざ、ヴァリアー本部である館につくと、

先が思いやられた。








もちろんのごとく、顔パスで屋敷の中へと入る。

洋館のつくりはボンゴレの本部と同じだった。

だが、ボンゴレとは違い、

まともにザンザスのいる部屋に着けたことはない。

必ず洗礼をうける。

かすかに風をきる音。

やっぱりねー!

と、冷や汗を流しながらしゃがんだ。

恐る恐る立ち上がり、壁を見る。

怖いくらい、予想通りにナイフが突き刺さっている。








ドン







「ぅ」

「久しぶりじゃね?








ナイフの気配は予想し、避けることができるのに、

どうしてこの男のことは避けることができないのか。

いつものように背中にはベルが乗っかってきた。

は自分の首に回されている腕を見る。

ベルだ。








「しかも、しばらくこっちいるんだろ?」

「最悪なことにね」

「やりぃ!」







ししし、と上機嫌に笑うベル。

もはや、彼をのける気力もなくしたは、

そのまま荷物のスーツケースを持ちながら前に進む。








「いい加減重いんだから、どいてよ」

「い・や・だ」

「・・・・はぁ」








相変わらず、この王子は子供っぽさが抜けない。

生意気な子供がそのまま大きくなったようだった。

ため息を漏らしながら進んでいると、廊下の横の扉が開く。

あぁ、やっぱり。

スクアーロだ。








「よぉ」

「スクアーロ、ベルをどけて」

「何やってんだ、おめぇは!」

「ししし」







スクアーロがベルに向けて剣を振る。

ベルは飛んで後ろによけた。

これが日常茶飯事の風景なんては信じがたいと思う。

立ち上がって、「ボスの部屋に行くから」と言って歩き出す。

二人はそれぞれの部屋にもどり、

は廊下の突き当たりの部屋の扉に手をかけた。

今回も何が起こるかわからない。

ノックをしたあと、五感をとぎすまして扉をあけた。








「やっぱりねー!」






バァン!







扉を開けた瞬間に視界に飛び込んできた置物をよけるべく、

あけていた扉を勢いよく閉めた。

すごい音がしたのは、置物が閉めた扉に当たったため。

その勢いがすごすぎて驚いた。

もう一度慎重に扉をあけると、こんどは何もない。

イスに座りながら口元をつりあげるヴァリアーのボスが見える。








「来たか」

「…」

「しっかり働けよ」

「はい…」








これから、

仕事が終わるまで地獄のような日々が始まるのかと思うと、

涙がこぼれそうになった。

渡されたリストに目を通しながら、先が思いやられる。

2、3日じゃ帰れそうにない仕事の量だった。








「…生きて帰れるかな?」