「できましたー!」

「これでよし!」

「・・・」

「すごい!かっこいいよ、ちゃん!」

「そうですよ!ハル、感動です!」

「・・・・・・・・・・そう?」






手を組み、キラキラとした瞳をこちらに向けるハルと京子。

まぶしいばかりの好奇の視線に、思わず顔を引きつらせた。

全身が写る鏡の前に立たされているの姿は・・・

まるで、






「これなら女の子だなんてバレないよ!」

「そうです!ちゃんはハル達の最高傑作ですから!」

「「ねー?」」

「べつに、女の子でよかったんですけど・・・」






まるで、

男のような格好になっている。

最高傑作。

そういわれる本人はものすごく複雑な気持ちだった。

おもちゃにされていないか?

そう思ったのは、口にしないでおく。







大き目のジーパンに、

同じく大きめのシャツに上着を重ねる。

女子にしては短い髪を、より短くみせるべく、

帽子をかぶり、余分な髪をピンでとめた。







一言でいうなれば、おしゃれな男子。

もっというなれば、

少し女々しい男子。

顔が綺麗な男子。

まぁ、男に見えなくはない。

というか、見える。







鏡の前で自分の姿をチェックしたあと、

「ま、いいか」と、これでいいことにした。






「じゃ、行ってくるね」

ちゃん、ちゃん」

「・・・何?京子ちゃん?」

「その格好だと、言葉遣いも直した方がいいんじゃないの?」

「・・・あぁ、・・・まぁ、そっか」

「ハルは、第一人称は"オレ"がいいと思います」

「了解。じゃ、オレ行くわ」






そう言って部屋を出た後、

部屋の中から、二人の黄色い声が聞こえたのは、

気のせいだと信じたいであった。















 変 装 












今朝、ツナからとある仕事を引き受けてしまった。





、ちょっといいかな?」

「ツナ、どうしたの?いいよ入って」






ボス直々の登場に、自室で雑誌を読んでいたは起き上がる。

ツナをソファに座らせると、そのソファに歩み寄りながらたずねる。






「どうしたの?」

「実はさ、今日、ヒマ?」

「まぁ、ヒマだけど?」

「あのさ、ちょっと頼まれてほしいんだ」






なんだか嫌な予感がした。

ツナが控えめな態度な分、嫌な予感がした。






「そ、そんな顔しないでよ」

「ヴァリアーにならいきません」

「違うよ」






最悪の事態は免れた、とは安堵の息を吐く。

彼女は時折、ヴァリアーとの連絡役で使われるのだが、

向こうに行って、まともに帰って来れたことがない。






「で、何を?」

「実は・・・この近くに住んでる街の子に、彼氏が浮気をしてないか、
  確かめてほしいってしつこく言われてるらしくって・・・」

「・・・浮気?」

「オレが言われたんじゃないけど、山本がさ、そういうの断れなくて」

「あぁ、武が・・・」






たしかに、断れなさそうな性格してるもんなぁ。

頭にあの爽やかスマイルを浮かべると、

やはり、断れなかったんだろうと納得できてしまう。

地元の街とはかかわりの深いボンゴレファミリーなので、

街の人から頼みごとをされることはしばしばあった。

浮気調査までも頼むのか、とは始めて知った。






「みんな仕事で忙しいみたいだし、」

「ここは探偵事務所かっつーの」

「なんとか頼めないかな?」

「んまぁ、いいけど」

「ほんとに?」

「うん、いいよ」







ありがとう!と必死に頭を下げるツナ。

自身、きっと自分の所に来たのは、なんとなくわかっていた。

実践的な仕事にあまり向いてない分、こういう仕事が回ってくることがある。

もそれを承知しているのだ。

他の仲間はもっと危険なところで仕事をしている。

そう思うと、どんな仕事でもできるだけのことはしないと、と思うのだ。














そして、今に至る。







ところで、何故男の格好なのかって?

それは、ハルと京子の企みだった。

このままの格好で尾行をすると帰って目立つ。

ボンゴレの一員としてこのへんの街の人には顔が割れている。

そこで、変装したほうがいいのでは?

そう思ったは、二人に相談をしに行ったのだ。






結果、

二人の言うがままに着替えると、

男装になっていたというわけである。








後にハルと京子は・・・





「だって、ちゃんの男装、見たかったんだもん」

「ツナさんという人がおりながら、惚れてしまいそうでしたぁ」






と語ったのを、この時点のは知らない。










浮気をお願いしたいと言った女性との待ち合わせ場所は、

大きな公園の時計の下だった。

それらしい女の人を見つけたので、足早にそちらへと向かう。

こちらに気づいた女の人に向かって頭をさげた。






「すみません、遅れてしまって・・・」

「・・・・」

「あの・・・?」

「あぁ!すみません、私ったら・・」

「?」






目の前にやってきた美少年(実は女だが)に思わず頬を染めてしまった。

そんな気も知らずに、自分は女なんだ、ともバラさずに、

は着々と話を続けた。
















「んー!終わったぁ!」






先ほどの女性は浮気調査を終えたあと再び待ち合わせをした。

なぜかどこかぼぉっとしている人だったなぁ、は思うが、

それが自分のせいなのだとは最後まで気が付かなかった。

何故か女性は顔を赤くしてお礼を言ったあと、帰った。

彼氏は浮気などしていなかった。

あのまま仲直りしてくれたらいいんだけど、

と、祈るばかりである。







女性と話をしていたカフェを出ると、

いつも買い物にきたりする街なのに、

いつもよりも人の視線が突き刺さる。

なんでだ?

そう思っていると、肩を軽く叩かれた。







「やっぱりあなただったのね」

「ビアンキ!」

「どこかでみたことあると思ったら・・・」






それに、

とビアンキは続ける。

のつまさきから頭までをジロジロと眺める。







「なんて格好してるの?」

「これはハルちゃんと京子ちゃんが・・・」

「とにかく歩きながら話しましょう」







このままじゃ、私が居辛いもの。

なんで?

女性の視線は怖いのよ?

は?







にとっては姉のようなビアンキに促されるまま、

ボンゴレの屋敷へと帰ることになる。

空もすっかり暗くなってきていた。






「ビアンキは・・・・私服だし、休みだったの?」

「まぁ、そんなとこよ」

「いいな」

「ツナにお願いしなさいよ」






二人で話していると、前から通りすぎる女性二人組みが、

の方をジッと見ている。

色目を使っているんだと、ビアンキには見て取れた。

女性二人組みが通り過ぎると、が「ねぇ、ビアンキ」と声をかけた。






「今日さ、いつもよりも女性の視線がつきささるんだけど・・・」

「あら、わかってるの?いつもは鈍いのに、珍しいじゃない」

「(鈍いって・・・) そんなにあたしの格好ヘンかな?」

「・・・・」






やっぱり気が付いてなかったのか。

思わずビアンキはため息をもらした。

「ぇ、なんでため息つくの!?」とが騒ぐ。







この子は、誰もを魅了してしまう。

男装をしてみれば、立派な美少年で、

女性が放っておくものか。







「あなたって、とことん、罪な子ね・・・」

「なんでそうなるの!?」