「実は頼みたい仕事があるんだ」
「どんな?」
「これなんだけど・・・」
ツナは机の上をススとすべらせて書類を向かいにすわるに見せた。
彼女はそれを持ち上げて自分の目の前に持ってくる。
一通り目を通した後、あっさりとOKを出す。
「だってパーティに出れるんでしょ?」
「まぁ、そうだけどさ・・・仕事はちゃんとしてよ」
「了解」
仕事の内容は簡単に説明すると、
とあるマフィアグループがパーティを開くから来てほしいとのこと。
本来はボスであるツナが行くべきところなのだが、
身の安全や都合を考えて他の人が行くことになった。
加えて、最近そのマフィアグループに不穏な動きがあるらしいので、
現地に行って情報収集をしてこいとのこと。
「それで、もう一人つけようと思うんだけど・・・」
「誰を?」
「骸がいいかと思うんだ」
「・・・却下」
即答。
「えぇ!」
「僕はいいですよ」
「「骸!」」
「楽しそうじゃないですか、マフィアの集まるパーティ」
クフフと笑う彼の目の前では、
さすがのも「却下」とはいえなかった。
「殺しはダメだからな、骸」
「わかってますよ」
わかってない顔だー!とツナは頭をかかえた。
最近ボスとしての威厳がないのでは。
と、いうのが最近のツナの悩みだ。
「なんで骸なの?ツナ?」
「というか、が骸のストッパ・・・いや、ピッタリかな?と思って」
「いま絶対ストッパーって言ったよね!?」

仕 事
「なんでドレスじゃないんですか?」
「・・・・さぁ、なんででしょう?」
若干キレ気味の骸に、怯えながら答える。
彼の服装は黒いスーツに白いシャツ、そして黒いネクタイ。
彼女の服装は黒いスーツに、白いシャツ、そして華やかな赤いコサージュ。
どうやら彼はがスーツできているのが気に入らないようだ。
パーティで女性が着るものといえばドレスだろ、
と、先ほどからかなり力説されている。
「そういう自分だって全身黒じゃない」
「僕はいいんです、僕は」
「・・・」
パーティ会場への移動中、その説教ばかりが続いた。
迎えにきてもらった車を降りれば、目の前には大きな屋敷が見える。
他の人たちもぞくぞくと集結しているようで人は多かった。
「うわっ、大きい屋敷!」
ついたのは大きな屋敷。
山の方にあるのか夜なので回りは真っ暗だった。
ただ、その建物が明るく照らし出されている。
黒いスーツを身にまとった人が招待状を確認した後、ホール案内された。
扉をあけるととても広いフロアに、たくさんの着飾った人がいる。
そして食事もたくさん並んでいた。
座って談笑や食事を楽しめるような机やイスも並んでいる。
「存分にお楽しみ下さい」
今日は二人ともボンゴレからの出席ということで、
顔を隠さずにして普通に行くようにとツナから言われた。
そのせいか扉を入った瞬間に人々の視線が集まる。
「ボンゴレだ」
「ボンゴレの六道だ」
「世界一のハッカーがいるぞ」
「ボンゴレのウィザードだ」
なんて声がちらちら聞こえてくる。
"ウィザード"とはの通り名だった。
ハッカーに関する類の言葉で、優れたハッキング能力を持つ人のことを示す。
マフィア界で"ウィザード"といえば誰もがのことだと知っているのだ。
それほどに彼女の知識と技術は群を抜いている。
そんなことを気にせず、二人は会場を眺めていた。
そう言って案内役の人が扉をしめたあと、は骸の方を見る。
視線に気づき、彼も彼女の方を見た。
「なんですか?」
「とりあえずさ・・・食べない?」
「そうですね」
シャンパンをそそいであるグラスを持って歩いている
ウェイターから二つグラスを受け取り、とりあえず席を確保。
骸がとってきてくれるというので、おとなしく座って待っていた。
四人がけのテーブルだった。
「お嬢さん、お隣よろしいですか?」
「はい、どうぞ」
見知らぬ人が声をかけてくる。
ボンゴレだと知って近づいてきたのかもしれない。
なんせ今日はマフィアのパーティだ。
「あなたがあの有名なボンゴレのさんですか?」
「えぇ、そうですよ」
「いや、噂どうり美しい・・・」
「ありがとうございます」
マフィア界での噂ではは
世界一のハッカーとして、
二本の短刀の使いとして、
そして、美しい容姿であるとして知られている。
いくどとなく他のマフィアの人から結婚を申し込まれることもあった。
マフィア界でも政略結婚というものがあり、
もちろんその類でもあったし、そうでないものもある。
申し込まれるごとに全て断ってきた。
こういった世辞を言われるものなれ、
なるべく口数を少なく言葉を返している。
うっかりしてボンゴレの情報がもれてしまわないようにだ。
「それにしてもすごい人の数ですね」
「あぁ、何せ200人程いるようですよ」
話をかえたのはだった。
広いホールを見渡せば人の多さが伺える。
こういった場ではお互いの腹の中を探り合うなどの、
情報交換や探りこみがたえない。
純粋にパーティを楽しもうとしている人もいるのだが。
加えて、こういう場にはたいてい男女がともにくる。
奥さんや愛人の類が多いことをは知っている。
会場にいる女性を見渡せばほとんどがドレスだった。
だが、さほど気にはしない。
シャンパンを一口飲んでいるとまた男が話しかけてくる。
金髪で短い髪の毛は清潔なイメージをもたせた。
きっとハンサムな類にはいるのだろうと思った。
「今日はお一人なんですか?」
「いえ、連れが・・・」
がホール全体を見渡して骸を見つけるとそちらに目をやる。
男もその視線の先にいる人物がわかると「あぁ」と声をもらした。
骸は一人の女性に捕まっていた。
「あぁ、彼はボンゴレの守護者・・・」
「よくご存知で」
「えぇ、ボンゴレはそれはそれは有名ですから」
「ところであなたはどちらの?」
「あぁ、私はこのパーティの主催者の息子、ヴィクトリアの者です」
ヴィクトリアとは今回このパーティを主催しているマフィアだ。
そこの息子ということは次期ボスということになる。
は失礼な行為をしてはいけないなと自分に言い聞かせる。
こんなところでボンゴレの評判をさげられない。
「この度は招待してくださってありがとうございます」
愛想笑いをうかべて軽く会釈した。
そんなことない、と彼は言う。
むしろ来てくれて光栄だ、と。
「よければ連絡先を教えていただいても?」
「仕事用でよければ・・・」
「あぁ、もちろんかまいませんよ」
そういわれたのでスーツの上着の内ポケットから名詞をとりだす。
一枚彼に手渡した。
そこにはの仕事用の電話番号とアドレスが書いてある。
ボンゴレのものは皆、二台以上携帯を持っている。
仕事に出ているときは仕事用の携帯しか持って行かないようにしている。
「また連絡させてもらいますね」
「えぇ、いつでも」
「そうだ、仕事の依頼のついでにお食事でもどうですか?」
だんだんと遠まわしな言い方ではなくストレートになってくる。
片手をとられてそう言われたので正直焦った。
笑顔で断ろうとしたとき、の向かいの席に誰かが座る。
「何してるんですか?」
「骸・・・」
顔は笑っているのだけれど、殺気がちらちらと見える。
彼はの手をとっている男を睨んだ。
骸の顔には「その汚い手で触るな」とでも書いてあるようだ。
ボンゴレの守護者であることを知っていた彼は顔を真っ青にして手を離した。
「そ、それではまた」
逃げるようにしてその場を離れていった。
呆れ顔で骸の方に振り返ると彼は満足そうな顔をする。
「もう少しで殺してしまうところでしたよ」
「ハハ・・・笑えない・・・」
目の前に出されたお皿には綺麗に食べ物が乗っている。
おなかがすいていたのでフォークとナイフをつかってそれを食べ始める。
「今のは誰なんです?」
「ヴィクトリアの次期ボス」
「ほぉ・・・」
「こ、殺さないよね?」
「そんなことしませんよ・・・今はね・・・クフフ」
クフフと笑いながら物騒なことをいう骸には青い顔をする。
マフィア嫌いは未だに直っていないらしく、
ツナは骸が仕事に行くたびに「無益な殺生はするな」と強く言い聞かせている。
今回の仕事(といっても遊びにきているようなものだが、)だって、
こんなにたくさんマフィア関係の人がうろうろするところに
骸を連れてきた理由がわからなかった。
「さっきの男、ヴィクトリアのボスの息子なら情報を聞き取れたのでは?」
「あぁ・・・まぁ、そうだった」
「どうするんですか?」
「骸がサクっと傷つけて、憑依したら聞きだせるんじゃない?」
「・・・簡単に言いますね、あなたは」
「これを最終手段としてツナは骸を選んだんだよ、きっと」
いざとなれば憑依してでも情報を引き出せとツナが言ったのではないか?
は一人で勝手にそう解釈する。
骸が憑依したところでヴィクトリアのものは気が付かないだろう。
だが、骸が憑依するのは最終手段。
まだまだパーティは始まったばかりだし、情報を聞き出すことにしよう。
「さて、食事も終えたし、仕事にかかろうか」
「もうですか?」
「もうって?」
「久々に二人の時間を、」
「さぁ、仕事仕事!」
彼の言葉を完全に無視して、気持ちを切り替え、
骸とは立ち上がり、肩をならべて人の間をくぐりぬける。
その間に他の人に聞き取られないぐらいの声で話を進める。
「この建物のセキュリティからデータベースに侵入しようと思う」
「なら僕は用なしですか?」
「んー・・・なにかあったら電話するから、会場で人と話しといて」
「わかりました」
二人はバラけて行動する。
ホールの入り口のガードマンに
「お手洗いはどこですか?」とたずねると案内してくれた。
ありがとう、とお礼を言ってトイレの個室に入る。
ジャンニーニに特別に作ってもらった小さな機械をトイレの壁にくっつけ、
同じく改造してもらった仕事用の携帯をとりだした。
機械のスイッチを入れると、通常の携帯の画面から特殊な画面に変わる。
さてさて、始めるとしますか。
指を軽くポキポキと鳴らし、
まずはアクセス制御の突破を痕跡が残らないように仕事を始める。
彼女にとっては朝飯前だった。
彼女がトイレから戻ってきたのは約15分後。
いつものごとく仕事が速い。
データベースに侵入して、
そのデータの複製をボンゴレ本部の自分のコンピュータに送信した。
この程度なら本部にいながらできるのだが、
現地のセキリュティーから直接アクセスしたほうがたやすいのだ。
あとは、現地(パーティ会場)での聞き込みとなる。
ホールに戻ってきたは愛想笑いを浮かべて数人の男性と話している骸に歩み寄る。
彼の顔からもう限界だ、という気持ちが伝わってきたので、
うまいこと言って骸と他の人たちを放した。
人が少ないホールの端のほうの席に着く。
「こ・・・殺してやりたい」
「だ、大丈夫?」
「えぇ、なんとか・・・」
「それより、どうだったんですか?」
「まぁ、バッチリ。ほしい情報がデータベースにあるかはわからないけど」
「こちらもいろいろ聞けましたよ」
「すごい!そんな器用なことできたんだ?」
「えぇ」
「とにかく血なまぐさいことが起こらなくてよかった」
「ものすごく簡単ですよ。単純な恐喝ですから」
ニコリと笑って言われても、
恐ろしいものを見たとばかりに、
は顔がひきつるのを覚えた。
「、もう情報収集はいいでしょう」
「だね」
「せっかくですし、パーティを楽しみませんか?」
「もちろん!」
骸はの手を引いて歩き始める。
その手を離さないように握り締めた。
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