長期の任務だった。
夜遅くに帰ってきて、自室に入り、
そのまま倒れるようにベットに吸い込まれた。
ここは唯一安心して眠れる場所。
日ごろはどんな小さな物音や気配でも目をさますのだが、
仕事の疲れもあってか熟睡していたらしい。
ふと、名前を呼ばれた気がした。
聞きなれた声だが思い出せない。
何より眠い。
夢なんだと思い再び意識を手放しそうになったとき、
ハッキリと言葉が聞こえた。
「起きないと何するかわかんないよ」
その言葉に眠気がふっとんだ。

襲 撃
パッチリと目をあけたが、
部屋もカーテンのせいでうすぐらいし、目もぼやけている。
さきほどから手首がにぎられているような気がして、顔を横に向けると
顔の横にある手首が誰かの手によってにぎられている。
ベットの上なので痛くは無いが。
やっとのことで焦点があってくると誰だかはっきりわかった。
「・・・ひ・・・ばり?」
声が上手くでない。しかたがない、寝起きだから。
しかし、この状況はなんだ?
まだ頭はぼんやりしていて考えることができなかった。
だが、じょじょに目をさましていくうちに、
非常に危険な状態にあるということが判明する。
殺気を感じないからと、気をぬいたことを後で後悔することになる。
「長い間どこ行ってたの?」
「・・・しご・・と」
「ケガは?」
「・・・してない」
「そんなに寝ぼけて・・・誘ってるの?」
何言ってるんだ、こいつは。
と思い、だんだんと頭がさえてくる。
段々と視界が明確になってゆく。
やっと状況が理解できた。
自分の真正面に雲雀の綺麗な顔。
はもともとベットに仰向けに寝てたわけだから、
押し倒されてる形になっている。
もともと寝ていたから押し倒されてはないんだけれども・・・
しかも手が塞がれているのは・・・非常に、非常にヤバい。
死の危険とは違う、身の危険を感じた。
「・・・ぇーと・・・雲雀?」
「何だい?」
「何してるの?」
「さぁ?」
力を入れてつかまれている手首を自由にしようと思っても、逃げられない。
蹴りをいれようと思ったが、この体制ではあたらない。
暑くないはずなのに変な汗が流れる。
「どうやって入って・・・きたの?」
「カギ開いてたよ」
「・・・うそ」
きっと疲れのあまり、閉め忘れたのだろう。
なんて恐ろしいことをしたんだと、ゾッとする。
そんなことを考えていたら顔が近づいてくるではないか。
ギュッと目をつぶれば頬に何かが触れた感触。
キスされたと頭で理解するのはすぐだった。
目をあけて思いっきり睨む。
彼は上機嫌そうに口端を吊り上げていた。
「ワオ!顔真っ赤だよ」
「うるさい!いいかげんにして!」
「そんな顔で言われても説得力ないよ」
「なっ!」
「ボクがどれだけ寂しかったかわかってる?」
んなもん、知るか!
と叫ぼうと思ったが、耳を甘噛みされたので、なさけない声が出た。
予想外の出来事で、どうすることもないので顔を赤くしながらも内心焦る。
"ヤバイ"という三文字で頭の中はいっぱいだ。
今までこうした襲撃はうけたことがある。
だが、自分に触られる前に相手をノックアウトにさせたり、
様々な方法で撃退してきたので、
今回のような手も足もでない状況は初めてだ。
それだけに焦りが増す。
雲雀の行動も大胆になっていく。
「油断したね」
「ちょっと・・・・・・ぁっ」
こんどは首筋を舐められる。
さすがにこれはヤバイと思いつつもどうすることもできない。
助けを呼びたくも携帯は手の届かないところにある。
唯一の頼みは枕の下に隠してある拳銃。
でも、手首が動かせないならとることもできない。
おそらく雲雀はマジだと感じたはされるがままになっているが・・・
雲雀がの着ているシャツのボタンを外し始めた時、
右手が開放される。
一瞬の隙を突いて枕の下に手を突っ込み、拳銃を引っ張り出す。
ゴリ
雲雀は自分の頭に拳銃の銃口が突きつけられているのがわかった。
武器も何もないだろうと踏んでいた自分が甘かった。
「どかないと、殺す」
「打てないくせに」
状況が逆転した。と思った。
確かに打てはしないけど、それでも目は雲雀を睨んだままだ。
彼は、両手を挙げて観念した。のポーズをとると、
は開いた左手でボタンのあいたブラウスを寄せて、
下着が見えないように隠した。
「まぁ、いいや。ごちそうさま」
「ぐ・・・殺す・・・」
「何なら続きする?」
「黙れ!」
打てないことをいいことにしゃぁしゃぁという雲雀に、
ムキーっと恥ずかしさと怒りとで顔を真っ赤にさせていう。
とにかく、このまま部屋にいても危ないと思った彼女は、
部屋の前を誰かが通ったのでいきなり扉を開けて助けを求めることにした。
「助けて!」
銃を片手に半泣きになりながら部屋の前をちょうど通った誰かに抱きつく。
がその人物に突然飛びつくように出てったものだから、
飛びつかれた当人は驚きでいっぱいだった。
が、
「ちゅわ〜ん!どうしたんだい?そんなカッコで・・・うへへ」
「げぇ!」
飛びついてからその人物がだれだかを知る。
人物を誤った!逆効果!
が飛びついたのはシャマルだった。
シャマルはこのチャンスを逃すまいと腰に手をまわす。
ひぃ!とがいつぞやのツナのような声をあげた。
キスをしようと顔を寄せてくるのを必死に両手でふせいでいると、
の部屋から雲雀が殺気をしまわずに出てきた。
「何してるの?」
「お前こそちゃんの部屋からなんで?」
「襲われたの!ってギャァ!」
「こんなカッコしてるのがいけなフゲェ!」
「咬み殺す」
いつのまにトンファーを出したのか、容赦なくシャマルを叩きのめす。
鼻血を出して倒れるシャマルを見て、
「巻き込んでごめんなさい」とは謝った。
そして次にトンファーをかまえている雲雀に目をやる。
圧倒的不利な状況に思わず身構えた。
誰かに助けを求めようとももう昼ごろになっていて、
みんな仕事なのか誰もいる気配がしない。
かといっても拳銃じゃ撃つことが出来ない。
「今日はもう何にもしないから、着替えたら?」
「"今日は"って・・・」
「他の男に見られるのは勘弁だからね」
油断大敵。
そう思って、身構えながら部屋に入り、
扉を閉め、カギもちゃんと閉めた。
ドアにもたれながら思わず脱力。
拳銃が右手からすべり落ち、
自分の体もドアをつたってやがて床におしりがついた。
「朝からなんだったの・・・」
先ほどのことを思い出し、顔を真っ赤にしながら頭をかかえた。
←