朝っぱらからツナに仕事を頼まれたのはよかったのだが・・・
その内容を聞いて彼女は綺麗な顔をキレイに歪めた。
言葉を聞かずとも極度に嫌がっているのが見て取れる。
そんな彼女の表情を見てツナが慌てた。
「そ、そんなに嫌がることかな?」
「嫌というか・・・無理」
「そんなぁ・・・」
仕事はいたって簡単だ。
封筒に入っている書類を持っていくだけ。
どこぞの誰かを暗殺するよりもたやすく、
それだけで仕事になるのなら喜んでするだろう。
ただし・・・持って行く場所が場所なのだ。
「渡して帰ってくるだけなんだからさ!頼むよ、!」
「無理。断固拒否!」
「そこをなんとか!」
「大体なんであたしなわけ!?他にも人はいっぱいいるんだからさ!」
「じゃないとダメなんだよ!」
「無理無理、今日は体調がすぐれないんで・・・」
「ウソ付け!朝ごはんおかわり三回もしてたろ!」
先ほどからこの調子であーだ、こーだ言い合いを繰り広げている。
ツナがハァとため息をついたあと、しょうがないな・・・と呟く。
「これを引き受けてくれないなら休暇とらせないよ」
「職務乱用!!」
さぁ、どうする?
なんて若干黒いものをちらつかせながら言われれば、
引き受けるしかなくて・・・
大切な休みをなくすわけにはいかなくて・・・
「喜んで引き受けますとも!」
「嫌だろうけど、頼んだよ」
「了解・・・」
ツナから受け取る書類を見て気持ちが沈んだ。
あそこに行くのは嫌なんだよなぁ・・・
なんせ、彼女が書類を届ける先は・・・・・・・ヴァリアー本部。

用 事
ボンゴレを支えるものとして様々な同盟ファミリーなどがある。
もちろん守護者もボンゴレを支える大きな力。
そんな守護者と対等に力を持つものたちが集うのがヴァリアーである。
ヴァリアーはボンゴレに所属している組織で、主に裏の仕事を担当している。
ボンゴレ本部とは少し離れた場所に拠点を持っている。
それは何故かと言うと、離れておいたほうが情報も集めやすいし、
その地域を治めやすいというもの。(これはリボーンの案)
は今から車に乗ってそこへ向かうのだ。
部屋に一度戻って黒いスーツに身を包んだ後、
憂鬱な気分のまま愛車のキーをにぎりしめて車庫へ向かう。
車庫へ行く途中どれほどため息をついたものか。
途中山本に出会い、
「ため息つくと幸せ逃げるぞー」
と、いわれたのに対し、
「もうとっくに逃げられてるよ」
と、力なく返事をした。
黒いフェラーリに乗り込むと助手席に封筒を放り投げた。
エンジンをかけてヴァリアー本部へと向かう。
本部の建物の前には見張りのために二人ほど黒いスーツを着た人が立っている。
顔を覚えられているためあっさりと扉をあけてくれた。
いわゆる顔パスってやつだ。
さっさとザンザスに書類を渡して帰ろうと心に決めていた。
だが、今までの経験上すんなりと帰してくれた記憶はない。
お泊りの経験だってあるくらいだ。
暗めの赤色の絨毯の敷き詰められた長くて広い通路を歩いている時・・・
背後から飛んでくるナイフをしゃがんでよけた。
壁にトトトトとナイフが五本刺さった。
冷や汗を流しながらそのナイフを見ていると、聞きなれた声がする。
と、同時に背中に重さを感じた。
「やっぱりきたー」
「ひゃっほー、。今回はしとめたと思ったのに」
「冗談に聞こえない・・・・ぅ・・ベル・・・重い・・・」
後ろから飛びつかれては振り返ることができない。
首を回して横をみれば自分の肩の上に見える金髪。
ヴァリアーの実力者の一人、ベルフェゴールだ。
なかなかに離してくれないのはいつものことで、肘鉄をくらわせる。
「ぅ」と呻くベルの隙をついてやっとのことで脱出できた。
わき腹をさすりながらベルが隣を歩いてついてくる。
「久々じゃねこっちくんの?オレ今日休みなんだよねー」
「まぁ、来たくなかったからね」
「えー!なんでー!?」
「アンタみたいなのがいるからだって」
ボスの部屋につくまで、そしてそこから帰るまでがなかなかに長い。
話しながら歩いていると今度は銀髪が目に入る。
スクアーロだ。
スクアーロに捕まれば戦えといわんばかりにつっかかってくる。
新しい剣術を試させろだの、なんだので大変だ。
「う"お"ぉい、来てたのかぁ、お前」
「来たくなかったんですけどね」
「えー、つれなくね?」
「って、ちょぉ!離れろ!」
スクアーロがそんなやりとりを呆れながら見たあと、
の手に持っている書類に目を移した。
「それ、ボスにかぁ?」
「そうなの、ツナに押し付けられた」
「ナイス!沢田綱吉!」
スクアーロが封筒をひったくり中身をパラパラと見る。
ベルも気になるのか覗き込むように見ていた。
封筒を押し付けられるように返された後、スクアーロは顔をしかめて言う。
「お"ぃ!ヴァリアーが前に断った仕事じゃねぇかぁ!」
「うちのボスがヴァリアーにしかできないからって」
「でも、わりと楽しそうじゃね?ししし、内容が内容だし」
「カスは黙ってろ!」
二人の喧嘩が勃発しそうなので無視して、
とにかくザンザスのいる部屋に向かう。
と、途中腕をグイと引かれて振り返った。
「あらー!やっぱりじゃない!」
「ルッスーリア、久しぶり」
「久しぶりねぇ、全然来ないから退屈だったのよ!」
暇つぶしを捕まえたとばかりに手を離してくれない。
前に数回ルッスーリアにつかまって着せ替え人形にされたことを思い出した。
きたことのないような服まで着せられたのだ。
「う"ぉ"ぉ"ぃ!何してんだテメェ!」
「オカマの分際で王子のモンに手出すなよ」
「やーねー男の嫉妬は」
テメェも男だろ!と三人からの心のツッコミが飛ぶ。
というか自分はベルのものではないと激しく否定した。
三人で口論が始まったのでやっと抜け出せて、
ボスの部屋へと向かうことにする。
いつもなかなかたどり着かないのだ。
「も大変だね」
「マーモンだけだよわかってくれるのは・・・」
涙が出そうだった。
ヴァリアーの人に対する愚痴はいつもマーモンに聞いてもらってる。
十年前までは肩乗りサイズだったのが、
今では肩を並べて歩けるほどになっている。
「それ、持ってきたの?」
「命がけでね」
少なからずココに来ればだれぞの奇襲にあうのだ。
寿命が縮む思いでいつもここにやってくる。
「そういえばレヴィは?」
「長期の仕事だよ。、アイツは危ないから近づいちゃダメだからね」
「アイツってレヴィ?」
「うん。むっつりが一番危ないよ」
「むっつりて・・・」
「じゃぁ、ボクはこれから仕事だから、またね」
「頑張って!」
「今度どこか飲みにいこーか」
「いいね、それ」
笑ってマーモンを見送った。
いつのまにか部屋の前に来ていたようなので、そのまま扉をノックする。
返事がないのはいつものことなのでそのまま中に入った。
扉を開けると同時にしゃがんだ。
グラスがものすごい速さで飛んできたからだ。
これも、いつものこと。
がよけたグラスは未だ口論していたスクアーロの頭にクリーンヒットした。
パリーン!といい音が聞こえる。ベルが爆笑した。
スクアーロの罵声がとんでくるまえに部屋に入って扉を閉めた。
「用はなんだ」
「これ、ボスから預かってきました」
机の上に封筒を置けば、
イスのうえでふんぞりかえっていたザンザスが手を伸ばして目をとおす。
もソファにすわった。
書類を読んだ彼はあからさまに顔をしかめる。
どうか機嫌を損ねないでくれとドキドキしながら祈る。
機嫌を損ねるとろくなことが起こりはしない。
「おい!」
「っ!な・・、なんですか・・・?」
「これは前断っただろーが」
「ヴァリアーにしかできないとボスが言っていましたから」
「あぁ?」
「あたしに聞かないでくださいよ!」
知ってるわけないだろーが!と言ってやりたいが、怖いので言えない。
仕事の内容を見て誰が適応か、どの仕事をヴァリアーに回すかは、
すべてボスであるツナが決めることなのだ。
そんなことを知る由も無いはただザンザスの殺気に耐えていた。
「ふん、まぁいい」
「引き受けてくれるんですね」
「おまえの所のカスに"貸し1つ"だと伝えとけ」
「わかりました」
あーぁ、ツナも貸し1つって最悪だな。
大して可哀想とも思わずに、立ち上がる。
「失礼しました」
そう言って部屋を出ようとしたとき、背後から何かが飛んでくる。
気配を感じてそれをこんどはよけずに素手でつかんだ。
スチールでできた灰皿だった。
受け止めたを見るとザンザスはニヤリと笑った。
「やっぱお前ヴァリアーに入れよ」
「考えておきます」
心にも思っていないセリフを言って、
ニコリと愛想笑いを投げかけると、
先ほどの灰皿をおもいっきりザンザス狙って投げたあと扉をしめた。
ヴァリアーのボスは飛んできた灰皿を片手に不適に笑っていた。
さぁ、残すはかえるだけだ!
そういきこんで部屋から出たのはよかったが、
その部屋を出てすぐスクアーロに罵声を飛ばされた。
「う"お"ぉ"い!テメェ!グラスよけるんじゃねーよぉ!」
「アンタらのボスが投げたんだから!知るか!」
「なー、こんな奴ほっといてオレとイイコトしね?」
「こんのクソ王子・・・ほんと暑苦しいな、離れろ」
「違うわよ、ベル!はこのアタシと買い物に行くのよね?」
「違う違う違う!もう帰る!」
「お"ぃ!こいつはオレと勝負するんだ!」
「って、スクアーロも違うから!」
三人に挟まれて互いに口論の嵐。
だから来たくなかったのに!と心の中で叫んだが、
そのの叫びは誰にも届きやしない・・・・。
自分をこんなところに放り込んだボスを恨んだ。
そのころボンゴレ本部では夕食時。
「ツナ君」
「ぇ、ぁ、何?京子ちゃん?」
「ちゃんは?」
「あー・・・は用事があってヴァリアーに行ったんだ」
たぶん今日は帰って来れないだろうな、とツナは密かに思う。
心の中で幾度と無くに謝罪の気持ちを示した。
「そーいえばなんでヴァリアーにはちゃんしか行かせないの?」
「なんでって・・・そりゃぁ・・・」
一度、自分自身や他の人にヴァリアーに行かせたところ、
死にかけて帰ってくる人もいたし、
まともに取り合ってくれないし・・・
それはそれは大変なことなのだ。
だが、たった一人だけ、例外がいる。
それがだ。
腕っ節もあるし、生きて帰ってくるだけの実力がある。
おそらくすでに十年前のリング争奪戦のころから気に入られていたのだろう。
だからツナはヴァリアーとの連絡役にを選んでいる。
「まぁ、いろいろな事情があるんだ」
「そうなんだ!ちゃんすごいね!」
「ほんとに・・・はすごいよ・・・」
今もどこかで彼女の叫びが聞こえる気がする。
後にツナの携帯に一件のメールが送られてくる。
:今日は帰ることができません。
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